やさしい言葉や文章に触れると
ほっこりした気持ちになります
あなたが言葉や文章でやさしさを上手に表現できたら
きっと周りはほっこりするでしょう
というわけで
今日のテーマは「やさしさ」です
やさしさを上手に表現している名言や短編をあつめました
【優しさの表現】 ―やさしい名言と文章まとめー
(原稿を紛失してしまった編集者に)
まだ少し
時間がある。
呑みに行こう。
Ⓒ赤塚不二夫(漫画家)
赤塚りえ子『バカボンのパパよりバカなパパ』徳間書店
ドコマデモ キミノ トモダチ アオオニ
浜田廣介(童話作家)『泣いた赤おに』
ごん、おまいだったのか。
いつも、栗をくれたのは。
新実南吉(童話作家、詩人)『ごんぎつね』
きみは、苦しむために
この世に 生まれて きたんじゃない。
生きることの すばらしさを
味わうために この世に 生まれて
きたんだ。
だれも きみを
苦しめる ことなんて、できない。
きみは、自分で自分を
苦しめている だけなんだ。
「もう、苦しまなくて いいよ」
そう、自分に 言ってあげなさい。
葉祥明(絵本作家)『きみは守られている』
『飴だま』 新実南吉 全文
春のあたたかい日のこと、
わたし舟にふたりの小さな子どもをつれた女の旅人がのりました。
舟が出ようとすると、
「おオい、ちょっとまってくれ。」
と、どての向こうから手をふりながら、さむらいがひとり走ってきて、舟にとびこみました。
舟は出ました。
さむらいは舟のまん中にどっかりすわっていました。 ぽかぽかあたたかいので、そのうちにいねむりをはじめました。
黒いひげをはやして、つよそうなさむらいが、こっくりこっくりするので、子どもたちはおかしくて、 ふふふと笑いました。
お母さんは口に指をあてて、
「だまっておいで。」 といいました。 さむらいがおこってはたいへんだからです。
子どもたちはだまりました。
しばらくするとひとりの子どもが、
「かあちゃん、飴だまちょうだい。」
と手をさしだしました。
すると、もうひとりの子どもも、
「かあちゃん、あたしにも。」
といいました。
お母さんはふところから、紙のふくろをとりだしました。
ところが、飴だまはもう一つしかありませんでした。
「あたしにちょうだい。」
「あたしにちょうだい。」
ふたりの子どもは、 りょうほうからせがみました。 飴だまは一つしかないので、 お母さんはこまってしまいました。
「いい子たちだから待っておいで、向こうへついたら買ってあげるからね。」
といってきかせても、子どもたちは、 ちょうだいよオ、ちょうだいよオ、とだだをこねました。
いねむりをしていたはずのさむらいは、 ぱっちり眼をあけて、子どもたちがせがむのをみていました。
お母さんはおどろきました。 いねむりをじゃまされたので、このおさむらいはおこっているのにちがいない、と思いました。
「おとなしくしておいで。」
と、 お母さんは子どもたちをなだめました。
けれど子どもたちはききませんでした。
するとさむらいが、すらりと刀をぬいて、
お母さんと子どもたちのまえにやってきました。
お母さんはまっさおになって、子どもたちをかばいました。 いねむりのじゃまをした子どもたちを、さむらいがきりころすと思ったのです。
「飴だまを出せ。」
とさむらいはいいました。
お母さんはおそるおそる飴だまをさしだしました。
さむらいはそれを舟のへりにのせ、刀でぱちんと二つにわりました。
そして、
「そオれ。」とふたりの子どもにわけてやりました。
それから、またもとのところにかえって、こっくりこっくりねむりはじめました。
新美 南吉 底本:「ごんぎつね 新美南吉 童話 作品集 1」 てのり文庫
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