夏の赤っぽい夕日もよいですが
冬の夕日はもっと綺麗です
黄色やだいだい色の印象的な色合いで
短時間で胸にしみいるように切なく終わります
こんな特徴的な冬の夕焼けは
冬夕焼(ふゆゆうやけ)、寒夕焼(かんゆうやけ)、冬茜、など
冬の季語にもなっています
その素晴らしい時(綺麗な夕焼けに出会えた時)に心置きなく言語化できるよう
今日はプロの作家が表現する夕焼けをまとめました
【プロが表現する素晴らしい夕焼】 ―夕焼が綺麗な時期に知っておきたい夕日の表現―
店を出たら、オレンジジュースを流したようなきれいな夕あかねの空だった。
「石の森」三浦綾子
新吉は、一人、道の上で、夕焼のうすれた西の空をのぞんで、雪のきた、遠くの山のけしきをながめていました。
すきとおるような空の色は、ちょうど冷たいガラスのように、無限にひろがっています。そして、刻々と紫色に山の姿が変わっていくのでありました。
「はととりんご」 小川未明
夕焼け。雲の裂け間から見える赤い光は、燃えている真紅のリボンのようだ。
「正義と微笑」 太宰治
その代りまた鴉がどこからか、たくさん集って来た。昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾のまわりを啼きながら、飛びまわっている。
ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻をまいたようにはっきり見えた。鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄に来るのである。
「羅生門」 芥川龍之介
半分姿を隠した夕日を、
紫や朱やサーモンピンクの雲が豪華なガウンのように彩っていた。
「ただひとりの読者」椎名桜子
夕陽は大空を焼き、断崖の岩肌を血の色に染め、そのうしろの鬱蒼たる森林を焔と燃え立たせていた。
岩頭にポッツリと立つ女の姿は、小さく小さく、人形のように可愛らしく、その美しい顔は桃色に上気し、つぶらな目は、大空を映して異様に輝いて見えた。
「断崖」 江戸川乱歩
夕焼の空は、赤から真紅に、真紅から緋に、そして紫へと色をかえていった。
それまでは見えなかったちぎれ雲が生あるもののようにあやしい色にはえ、大空から下に向って威嚇をこころみる。
恐竜島 海野十三
夕焼の燃えてゆく空の奇蹟がありながら、ささやかな人間の生きかたに何の奇蹟もないと云うことはかなしい。
「新版 放浪記」 林芙美子
ワッと声上げて泣きたし冬夕焼
土屋 ゆき
夕焼雲がしだいに茜のいろをおとしてゆき、海上には夜をまねくたそがれのけはいがながれはじめました。
「人魚」 火野葦平
ある夕方、よわよわしい赤い夕日の道を、ながいかげをひきながら、松葉杖にすがって、ちんぎりちんぎり、やってくるひとりの男のすがたが見えました。
「丘の銅像」新美南吉
遥かの西空は真赤な夕焼、竜巻に似た黒雲が二すじ三すじその朱色の光の中に垂れ下っていた。
みなかみ紀行 若山牧水
「お父さん」と呼んでみる。お父さん、お父さん。夕焼の空は綺麗です。
そうして、夕靄は、ピンク色。夕日の光が靄の中に溶けて、にじんで、そのために靄がこんなに、やわらかいピンク色になったのでしょう。
そのピンクの靄がゆらゆら流れて、木立の間にもぐっていったり、路の上を歩いたり、草原を撫でたり、そうして、私のからだを、ふんわり包んでしまいます。
私の髪の毛一本一本まで、ピンクの光は、そっと幽かにてらして、そうしてやわらかく撫でてくれます。
それよりも、この空は、美しい。
このお空には、私うまれてはじめて頭を下げたいのです。
私は、いま神様を信じます。これは、この空の色は、なんという色なのかしら。
薔薇。火事。虹。天使の翼。大伽藍。
いいえ、そんなんじゃない。もっと、もっと神々しい。
「女生徒」 太宰治
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